【設計】ユーザーストーリーとは?

みなさまこんにちは。
高橋 聡です。

今回はユーザーストーリーについてです。

ユーザーストーリーとは、主にアジャイルソフトウェア開発において、開発すべき機能や仕様をユーザーの視点から簡潔に記述する手法です。システムがユーザーにどのような価値を提供するかを明確にすることを目的としています。

ユーザーストーリーの基本的な形式

一般的に、ユーザーストーリーは以下のシンプルな形式で記述されます。

「[役割/ペルソナ] として、[達成したいこと/機能] をしたい。それは [理由/得られる価値] のためだ。」

(英語では “As a [type of user], I want [an action] so that [a benefit/a value].”)

例:
「ECサイトの利用者として、商品をキーワードで検索したい。それは欲しい商品をすぐに見つけられるためだ。」
「ブログの管理者として、記事を予約投稿したい。それは決まった時間に自動で公開できるためだ。」
「プロジェクトマネージャーとして、タスクの進捗状況を一覧で確認したい。それはプロジェクト全体の遅延を早期に把握できるためだ。」

ユーザーストーリーの構成要素

役割 (Role) / ペルソナ (Persona):
誰がその機能を必要としているのかを示します。具体的なユーザー像(例:新規顧客、リピーター、管理者など)を定義します。
達成したいこと (Goal) / 機能 (Feature):
そのユーザーがシステムを使って何をしたいのか、どんな機能が必要なのかを記述します。動詞で表現されることが多いです。
理由 (Reason) / 得られる価値 (Value):
なぜその機能が必要なのか、それによってユーザーがどのような利益や価値を得られるのかを説明します。これが最も重要な部分であり、開発の優先順位付けや機能の妥当性を判断する基準となります。

ユーザーストーリーのメリット

ユーザー中心の視点: 常にユーザーのニーズや価値に焦点を当てて開発を進めることができます。
コミュニケーションの促進: 開発者、プロダクトオーナー、ステークホルダー間での共通理解を深め、効果的なコミュニケーションを促します。専門用語を避け、平易な言葉で記述されるため、技術者でない人にも理解しやすいです。
要求の明確化と共有: 複雑な要求を小さく、理解しやすい単位に分割し、チーム全体で共有しやすくします。
優先順位付けの容易化: 各ストーリーが提供する価値が明確になるため、開発の優先順位を付けやすくなります。
柔軟性と適応性: アジャイル開発の反復的な性質と相性が良く、変化する要求にも対応しやすいです。
スコープの管理: プロジェクトのスコープを明確にし、不必要な機能の追加を防ぐのに役立ちます。
テストの容易化: 「得られる価値」が明確なため、受け入れテストの基準を設定しやすくなります。

良いユーザーストーリーの特性 (INVEST原則)

良いユーザーストーリーは、以下の特性を満たすことが望ましいとされています。「INVEST」という頭字語で覚えられています。

Independent (独立している): 他のユーザーストーリーに極力依存せず、単独で開発・テストできる。
Negotiable (交渉可能である): ストーリーの詳細は、開発チームとプロダクトオーナーとの対話を通じて決定されるべきであり、固定的な契約ではない。
Valuable (価値がある): ユーザーまたはビジネスにとって明確な価値を提供する。
Estimable (見積もり可能である): 開発に必要な工数や時間を見積もることができる程度の大きさである。
Small (小さい): 1回のイテレーション(スプリント)で完了できる程度の適切なサイズである。
Testable (テスト可能である): そのストーリーが完了したことを確認するためのテスト基準を定義できる。

ユーザーストーリーの活用

プロダクトバックログの作成: ユーザーストーリーはプロダクトバックログの主要なアイテムとなります。
スプリントプランニング: 各スプリントでどのユーザーストーリーに取り組むかを計画します。
ユーザーストーリーマッピング: 複数のユーザーストーリーを時系列や優先度で整理し、ユーザーの体験全体を可視化する手法です。製品の全体像を把握し、リリース計画を立てるのに役立ちます。

ユーザーストーリー作成時の注意点

「誰が」「何を」「なぜ」を明確に: 3つの要素が欠けないようにします。特に「なぜ(価値)」が重要です。
ユーザーの言葉で書く: システムの専門用語ではなく、ユーザーが使う言葉で記述します。
解決策ではなく問題や要求を記述する: 具体的な実装方法(UIデザインなど)を詳細に記述するのではなく、ユーザーが何をしたいのか、どんな課題を解決したいのかに焦点を当てます。
小さく分割する: 大きすぎるストーリーは見積もりや開発が困難になるため、適切なサイズに分割します。
対話を重視する: ユーザーストーリーは「会話のための招待状」とも言われます。カードに書かれた内容が全てではなく、チーム内での対話を通じて詳細を詰めていくことが重要です。

ユーザーストーリーは、ユーザーの視点を開発の中心に据え、チームのコラボレーションを促進するための強力なツールです。

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